差別的表現に配慮しても、差別対策には効果が見られない場合
言い回しをいじっても効かない?
うわつらを整えても、根の信念と価値観には変わりはないかも2010/08 EurekAlert Rhetoric, framing efforts have little influence in same-sex marriage debate
「同性愛者カップル」の代わりに「同性カップル」と表記し、
「ゲイの権利」の代わりに「市民権」と表現し、
・・・
言葉の表現に配慮したとしても、かようなレトリックやフレーミング効果は、こと「同性間結婚問題」に関しては、たいして影響はないのであった。
同性間結婚を合法化する上で、用語と問題を調整する工夫(この手法は、しばしば世論に有効な影響を及ぼす)は、米国で進行中の討論「同性間結婚問題」をめぐる世論においては、あまり効き目がなさそうだよ。
他の課題であれば、用語の調整はわりと効果が現れるんだけどね。
例えば、同性愛者は軍役につけるようにするべきかどうかの討論とかさ。
この「同性間結婚問題」の場合、各人の意見が非常に強固すぎて、多少表現や用語を工夫しようとも、はっきりした効果を及ぼすところまで行かなかったんじゃないかな。
“Competing Frames and (Non) Effects on Public Support for Same-Sex Marriage.” Society for the Study of Social Problems. Atlanta, GA. 2010 (with Hubert Izienicki, Oren Pizmony Levy, and Aaron J. Ponce).





その違いは何なのか、どう使いどころを見極めていけばいいのか、現時点ではまだ今後のさらなる調査を待つところ(2010年秋の時点で)であるらしい。
同時期に、日本でも似たような主題の研究報告が出されています。
2010/08 【日本語サイト】京大
「障がい者」表記は障害者のイメージを向上させる?:ポジティブなイメージ変わるが、ネガティブなイメージ変わらず
障害者の表記を、「障がい者」と、ひらがな混じりにするとどうなるか。
障害者に対するポジティブなイメージの変容は起こりうるが、ネガティブなイメージや交流への意欲に変化は見られなかった。
表記の効果は、障害者に対する認識の一側面の変容に限られ、しかもその効果はボランティア経験のある人の場合にのみ有効だった。
どうやら、表記変更だけでは、実際の障害者との関係性改善にはあまりつながらないらしい。
〜『「障がい者」表記が身体障害者に対する態度に及ぼす効果 接触経験との関連から』
教育心理学研究,58(2),129-139. 栗田季佳・楠見孝(2010)



思い込み(差別意識・苦手意識・嫌悪感)を解消しようとして、「こうすれば効果があるはず」と思い込みだけで対処してしまうと、的はずれなことになりかねない。
どんな効果が欲しくて行うのか。その問題に関して、効果があることは確認されていただろうか。施策を実行に移す前に、一つ立ち止まって確認できる範囲だけでも、見回してみるのがいいのかもしれない。
まあ、上掲の例では、「効果が無さそう」レベルであって、逆効果とまではいかないぶん、まだ救われているのかも。
どっかで下手して「善意のつもりが逆効果」なんてなことになってたら、それはしんどいですものね。
